1. 症例紹介:5歳のアメリカンショートヘア「ココちゃん」
今回ご紹介するのは、5歳のアメリカンショートヘア、ココちゃんです。2日前から軟便が続き、今日は下痢に加えて少し元気がない様子で来院されました。
飼い主様に詳しくお話を伺うと、最近フードを変えたこと、外で拾い食いをしたことがあるとのことでした。体重・体温・水分状態をチェックしたところ、大きな異常はありませんが、脱水の軽度のサインがありました。
2. 下痢の原因と糞便検査の役割
猫の下痢は原因が多岐にわたります。
- 食事の急な変更や消化不良
- 細菌やウイルス感染
- 寄生虫
- ストレスや環境の変化
- 内臓疾患(腎臓・肝臓など)
原因を特定するために、糞便検査は非常に重要です。特に、感染性の下痢かどうか、寄生虫や細菌の有無を調べることができます。
ココちゃんの糞便検査では、通常の腸内細菌叢に加えて「芽胞菌」が検出されました。
3. 芽胞菌とは?
芽胞菌とは、一部の細菌が持つ特別な「休眠状態」のことです。通常の細菌は栄養がなくなると死んでしまいますが、芽胞を作る細菌は非常に丈夫になり、環境の厳しい条件でも生き延びます。
- 特徴
- 高温・乾燥・消毒液に耐える
- 長期間土や水中でも生存可能
- 必要なときに再び増殖して活性化
猫や犬の腸内には元々少量の芽胞菌が存在することがあります。多くの場合は健康に影響を与えませんが、腸内バランスが崩れると増殖して下痢を引き起こすことがあります。
代表的な芽胞菌には以下があります。
- クロストリジウム属(Clostridium)
下痢や軽度の消化器症状を引き起こすことがあります。 - バチルス属(Bacillus)
普段は無害で、プロバイオティクスとして使われることもあります。
4. 治療とケアのポイント
芽胞菌が原因で下痢が起きている場合、治療は症状や菌の種類によって異なります。
- 脱水補正
下痢で水分が失われるため、必要に応じて皮下点滴や経口補水を行います。 - 整腸剤の使用
腸内フローラを整えるために、プロバイオティクスや整腸剤を使用することがあります。 - 抗菌薬の選択
症状が重い場合や特定の病原菌が疑われる場合は、適切な抗菌薬を選んで使用します。むやみに抗菌薬を使うと腸内細菌叢のバランスを崩すため注意が必要です。 - 食事管理
消化にやさしいフードで腸を休ませることが重要です。 - 環境管理
トイレの清掃や食器の消毒、ストレスを減らす環境づくりも大切です。
ココちゃんには、まず整腸剤と消化にやさしいフードに切り替えて経過を観察しました。数日で軟便は改善し、元気も戻りました。
5. まとめ
芽胞菌は、特別な休眠状態を持つ菌で、必ずしも悪さをするわけではありません。しかし、腸内バランスが崩れると下痢の原因になることがあります。
- 下痢が続く場合は早めに動物病院で糞便検査を
- 脱水を防ぐため水分補給をしっかり
- 腸内フローラを整える食事や整腸剤でサポート
日頃から猫の便の状態を観察し、異常があればすぐに相談することが健康維持につながります。ココちゃんのように、適切なケアで症状は改善することが多いです。
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