皮膚疾患

① アトピー性皮膚炎について

こんにちは。レラ動物病院札幌の獣医師、佐々本です。
犬や猫にも「アトピー性皮膚炎」という慢性の皮膚病があります。これは、体質的なアレルギー反応により、皮膚に炎症とかゆみを引き起こす疾患です。

原因は主にハウスダスト、花粉、カビなどの環境中のアレルゲンです。特に春や秋など、季節の変わり目に症状が悪化しやすくなります。初期症状として、顔や耳、足先、脇の下を頻繁に掻く、舐めるなどの行動が見られます。放置すると皮膚が赤くなり、脱毛や色素沈着を起こすこともあります。

アトピー性皮膚炎は完治が難しい病気ですが、適切な治療により症状を抑えることが可能です。抗アレルギー薬や免疫抑制剤、スキンケアシャンプーなどを組み合わせて治療を行います。環境整備も重要で、室内の掃除や加湿、寝具の洗濯などが再発予防に役立ちます。

早期に診断を受け、根気よく治療を続けることが大切です。日々のケアを丁寧に行うことで、動物たちは快適に過ごすことができます。


② ノミ・ダニによる皮膚炎

犬や猫の皮膚トラブルの中でも特に多いのが、ノミやダニが関係する「寄生虫性皮膚炎」です。
ノミはわずか1匹でも強いかゆみを引き起こし、皮膚全体に炎症を広げてしまいます。

症状は主に背中や腰、尻尾の付け根に集中し、赤い発疹やかさぶたが見られます。特に「ノミアレルギー性皮膚炎」では、ノミの唾液に反応して激しいかゆみが起こります。

予防が最も重要で、月に1回の駆虫薬の使用をおすすめします。室内飼いのペットでも、人の衣服などを通じて寄生虫が入り込むことがあるため油断は禁物です。

ノミを見つけた場合は、ペットだけでなく寝具やカーペットの清掃も徹底しましょう。再発を防ぐためには、定期的な健康チェックが欠かせません。


③ マラセチア性皮膚炎

マラセチア性皮膚炎は、皮膚に常在する真菌(カビの一種)が増えすぎて炎症を起こす病気です。
湿気や皮脂の多い部位に発生しやすく、耳、脇、足の間、口の周りなどに症状が出ます。

特徴的なのは、ベタつき、独特のにおい、褐色の皮膚です。耳に発生した場合は「マラセチア性外耳炎」として、茶色い耳垢や強いかゆみを伴うことがあります。

治療では抗真菌薬のシャンプーや内服薬を使い、皮脂分泌のバランスを整えます。
再発防止のためには、通気性を保ち、過剰な湿気を避けることが大切です。

「最近、皮膚がベタつく」「においが気になる」と感じたら、早めに受診をおすすめします。


④ 細菌性皮膚炎(膿皮症)

膿皮症は、皮膚の常在菌が異常に増殖して起こる感染性の皮膚炎です。
赤い発疹、かさぶた、脱毛、フケなどが見られ、かゆみを伴います。

原因はアトピー性皮膚炎やアレルギー、シャンプーのしすぎ、免疫力の低下などさまざまです。
治療には抗生物質の投与や薬用シャンプーが用いられますが、同時に「なぜ膿皮症になったのか」を探ることが重要です。

再発を繰り返す場合は、基礎疾患の治療や生活環境の見直しが必要です。皮膚を清潔に保ちながらも、洗いすぎに注意し、健康な皮膚バリアを維持しましょう。


⑤ 耳ダニ症(外耳疥癬)

耳ダニは、耳の中に寄生する小さな虫で、特に子猫や子犬で多く見られます。
黒い耳垢、激しいかゆみ、頭を振る仕草が典型的な症状です。

感染力が強く、同居動物にも広がることがあるため、早期発見と治療が欠かせません。
治療には駆除薬や点耳薬を使用し、耳の洗浄を定期的に行います。

放置すると外耳炎や中耳炎に発展することもあるため、「耳をかく」「頭を振る」といったサインを見逃さないよう注意しましょう。


⑥ 外耳炎(細菌・真菌性)

犬に特に多く見られる耳のトラブルが「外耳炎」です。
細菌や真菌の感染、アレルギー、耳毛や異物などが原因になります。

症状は、耳の赤み、におい、耳垢の増加、頭を振る仕草など。放置すると中耳炎や内耳炎に進行し、痛みや平衡感覚の異常が出ることもあります。

治療は耳洗浄と薬の使用が中心ですが、再発防止には定期的な耳ケアが不可欠です。
垂れ耳の犬種や湿気の多い環境では、特に注意が必要です。


⑦ 食物アレルギー性皮膚炎

食事に含まれるタンパク質などに体が反応し、皮膚に炎症を起こすのが「食物アレルギー性皮膚炎」です。
主な原因は、牛肉、鶏肉、乳製品、小麦などです。

顔や耳、足先、肛門の周りなどにかゆみが出やすく、慢性的に続くのが特徴です。
診断には除去食試験が必要で、一定期間特定のフードのみを与え、症状の変化を観察します。

治療の基本は原因食材の除去とバランスのとれた食事管理です。
自己判断でフードを変えるのではなく、獣医師の指導を受けながら進めることが重要です。


⑧ 乾性皮膚炎(フケ症)

乾燥によるフケやかゆみは、冬によく見られる皮膚トラブルです。
皮膚の水分と油分のバランスが崩れ、角質が剥がれ落ちることでフケが増えます。

シャンプーのしすぎや暖房による乾燥が原因になることも多いです。
保湿力のあるシャンプーやオイルスプレーを使い、皮膚の潤いを守ることが大切です。

また、室内の湿度を40〜60%に保つことで、皮膚環境を整えることができます。
乾燥が続くと他の感染症の原因にもなるため、早めの対処を心がけましょう。


⑨ 湿疹(ホットスポット)

ホットスポットは、突然現れる赤くジュクジュクした湿疹のことです。
虫刺されやストレス、アレルギーなどが原因となり、掻いたり舐めたりすることで急速に悪化します。

患部は熱を持ち、痛みを伴うこともあります。治療では炎症を抑える薬の使用と、患部を清潔に保つことが大切です。

再発を防ぐには、ブラッシングやストレス管理、湿気の少ない環境づくりが有効です。


⑩ 耳血腫

耳血腫は、耳介内に血液がたまり、耳がぷっくりと腫れる病気です。
多くは耳を強く掻いたり振ったりすることで血管が破れ、血液が皮下にたまることが原因です。

放置すると耳が変形したまま固まることがあり、痛みも強くなります。
治療には穿刺・ドレナージや外科手術が行われることもあります。

根本原因である外耳炎やアレルギーを治療し、再発を防ぐことが何より重要です。

-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
レラ動物病院
〒001-0907
北海道札幌市北区新琴似7条9丁目5−8
011-769-2500
セカンドオピニオンの方は事前に連絡ください。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-