前立腺がんの末期症状とは?~愛犬のために知っておきたいこと~
犬の前立腺がんは比較的まれな病気ですが、進行が速く、発見されたときにはすでに末期の状態であることが多い疾患です。本記事では、前立腺がんの末期症状や飼い主様ができるケアについて詳しく解説します。
1. 【前立腺がんとは?】
前立腺がんは、前立腺の細胞が異常に増殖することで発生する悪性腫瘍です。犬では高齢になるほど発症リスクが高まり、特に未去勢のオス犬で発症することが多いとされています。しかし、去勢済みの犬でも発症する可能性はあり、どの犬にも注意が必要です。
前立腺がんは進行が速く、発見が遅れると膀胱や直腸、脊椎など周囲の組織に浸潤し、排尿や排便のトラブル、歩行困難などの深刻な症状を引き起こします。
2. 【前立腺がんの末期症状】
前立腺がんが進行すると、次のような症状が現れます。
① 排尿・排便のトラブル
前立腺は膀胱や尿道、直腸の近くにあるため、腫瘍が大きくなるとこれらの臓器を圧迫します。その結果、尿や便が出にくくなるという症状が現れます。
- 頻繁にトイレに行くが、尿の量が少ない
- 血尿が出る
- 尿を出すときに痛がる(鳴く、体を震わせる)
- 排便がしづらくなる(便が細くなる、出ない)
これらの症状が見られた場合、すでに腫瘍が大きくなっている可能性があります。
② 歩行困難・後肢の麻痺
前立腺がんが進行すると、腫瘍が脊椎に浸潤し、神経を圧迫することがあります。その結果、後ろ足に力が入らない、歩き方が不安定になる、立ち上がれなくなるといった症状が現れることがあります。
特に、以下のような変化が見られたら注意が必要です。
- 歩くのを嫌がる、すぐに座り込む
- 後ろ足がふらつく
- 足を引きずる
- 排泄時に踏ん張れない
進行すると完全に歩けなくなることもあるため、早めの対応が求められます。
③ 食欲不振・体重減少
がんが進行すると、体全体の代謝が変化し、エネルギーを消耗しやすくなります。そのため、食欲が落ちる、痩せてくる、元気がなくなるといった全身症状が現れることが多くなります。
特に、大好きなご飯を食べなくなる、好物でも見向きもしないという状態になった場合は、体力が大きく低下しているサインかもしれません。
④ 痛み・不快感による行動の変化
前立腺がんが進行すると、腫瘍の圧迫や浸潤によって痛みを伴うことが多くなります。
- 触ると嫌がる(お腹や腰を触ると唸る、逃げる)
- 落ち着かない(頻繁に体勢を変える、ウロウロする)
- 鳴き声が増える(痛みを訴えている可能性)
- 元気がなく、ぐったりしている
痛みが強くなると、愛犬の生活の質(QOL)が著しく低下するため、鎮痛処置が必要になります。
3. 【前立腺がん末期のケア方法】
前立腺がんの末期では、完治を目指す治療よりも愛犬が少しでも快適に過ごせるようにすることが重要です。
① 痛みを和らげる
- 獣医師と相談しながら適切な鎮痛剤を使用する(NSAIDsやオピオイドなど)
- マッサージや温熱療法で体をリラックスさせる(※獣医師の指導のもと行う)
- 寝床を柔らかくして負担を減らす(クッション性の高いベッドを用意)
② 排尿・排便をサポート
- トイレの回数を増やす(出にくい場合は長めの散歩で刺激を与える)
- 水分を十分に取らせる(脱水を防ぐことで尿の排出を促す)
- ペットシーツを活用し、排泄の負担を軽減する
③ 食事と栄養管理
- 高カロリーの流動食を活用(食欲が落ちたときの補助として)
- 消化の良い食事に切り替える(消化器に負担をかけないものを選ぶ)
- 無理に食べさせず、愛犬のペースを尊重する
④ 生活環境を整える
- 暖かく快適な場所を用意する(体温調節が難しくなるため)
- ストレスを減らす(騒音を避け、落ち着ける環境を整える)
- 無理な運動をさせず、愛犬のペースに合わせる
4. 【飼い主様へのメッセージ】
前立腺がんの末期を迎えた愛犬にとって、最も大切なのは安心して穏やかに過ごせることです。飼い主様がそばにいることで、愛犬も安心感を得られます。
「最後までできることをしてあげたい」「苦しまずに過ごしてほしい」と思うお気持ちはとても大切です。獣医師と相談しながら、愛犬にとって最善のケアを考えていきましょう。
愛犬との時間を大切にしながら、一緒に過ごせる時間を少しでも快適にしてあげられるよう、寄り添っていけるとよいですね。
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