前立腺癌の手術について:手術しても亡くなるの?

前立腺癌の手術について:手術しても亡くなるの?

犬や猫の前立腺癌は比較的まれな病気ですが、発見された際には深刻な状態であることが多く、治療法について飼い主様が悩まれることがよくあります。特に、「手術をしても助からないのか?」という疑問を持たれる方が多いでしょう。本記事では、前立腺癌の特徴や手術の可能性、治療の選択肢について解説します。


1. 【前立腺癌とは?】

◇ 前立腺癌の特徴

前立腺癌は、前立腺の細胞が悪性腫瘍化する病気です。特に犬では発生率は低いものの、進行が速く、転移しやすいことが特徴です。

前立腺癌の特徴
高齢犬に多い(平均発症年齢は10歳以上)
去勢済みの犬でも発症する
悪性度が高く、進行が早い
膀胱やリンパ節、骨などへ転移しやすい

◇ 主な症状

前立腺癌の初期は無症状のこともありますが、進行すると以下のような症状が現れます。

排尿障害(頻尿、血尿、尿が出にくい)
排便障害(便秘、排便困難)
後肢の麻痺や歩行困難(骨転移による影響)
食欲低下・体重減少

これらの症状が見られた場合、早めに動物病院を受診することが大切です。


2. 【前立腺癌は手術で治るのか?】

前立腺癌の治療方法には、**外科手術、放射線治療、化学療法(抗がん剤)**などがあります。では、手術で完治できるのかを見ていきましょう。

◇ 手術の難しさ

前立腺癌の手術は非常に難しいとされています。その理由は以下の通りです。

🔹 転移しやすい → 発見時にはすでに転移していることが多い
🔹 前立腺は重要な臓器に囲まれている → 完全に摘出するのが難しい
🔹 排尿・排便の問題 → 手術後に排尿障害が起こる可能性がある

手術単独で完治させるのは難しく、他の治療と組み合わせるのが一般的です。

◇ 手術のメリットとデメリット

メリットデメリット
癌の一部を取り除ける完全摘出が難しい
腫瘍による圧迫を軽減できる合併症のリスクが高い
症状の緩和が期待できる手術後に排尿障害が起こる可能性がある

そのため、多くのケースでは手術よりも他の治療法を優先することが多いです。


3. 【前立腺癌の治療法】

手術以外の治療法も含め、総合的な治療アプローチが必要です。

◇ ① 放射線治療

腫瘍の成長を抑えるために行われます。特に緩和的な放射線治療は、症状の改善に役立つことがあります。

✔ 痛みを軽減できる
✔ 排尿・排便障害の改善が期待できる
✔ 進行を遅らせる可能性がある

ただし、動物医療では放射線治療を行える施設が限られているため、実施できる病院を探す必要があります。

◇ ② 抗がん剤治療(化学療法)

前立腺癌は抗がん剤の効果が限定的ですが、一部の薬剤で腫瘍の成長を抑えられることがあります。

代表的な薬:
ピロキシカム(NSAIDs) → 炎症を抑え、腫瘍の進行を遅らせる効果が期待される
カルボプラチン、ドキソルビシン → 一部の症例で効果がみられる

ただし、副作用(食欲低下、嘔吐、下痢など)もあるため、慎重に検討する必要があります。

◇ ③ 緩和ケア

前立腺癌は完治が難しいため、生活の質(QOL)を維持する治療が重要になります。

鎮痛剤で痛みをコントロール
食事管理(消化の良いフードを選ぶ)
排尿・排便のサポート(カテーテル管理など)

ご家族と相談しながら、無理のない治療を選択することが大切です。


4. 【前立腺癌と診断されたら…】

もし愛犬・愛猫が前立腺癌と診断された場合、まずどの治療が適しているのかを獣医師としっかり相談しましょう。

治療の目的を明確にする(完治を目指すか、QOLを重視するか)
リスクとメリットを理解する
無理のない治療を選ぶ

手術が適応となる場合もありますが、ほとんどのケースで緩和的な治療が主体となります。


5. 【まとめ】

前立腺癌は手術しても完治が難しい病気ですが、治療によって生活の質を向上させることは可能です。

🔹 手術は可能だが、リスクも高い
🔹 放射線治療や抗がん剤治療が選択肢となる
🔹 緩和ケアを取り入れて、できるだけ快適な生活を送らせることが重要

前立腺癌と診断されると、飼い主様は大きな不安を感じると思います。しかし、適切な治療とサポートによって、できるだけ快適に過ごせる時間を作ることができます。獣医師とよく相談しながら、愛犬・愛猫にとって最善の選択をしていきましょう。

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