腫瘍による骨折とは?原因と治療法を解説

腫瘍による骨折とは?原因と治療法を解説

動物の骨折と聞くと、交通事故や高い場所からの落下などの外的な衝撃を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、骨がもろくなってしまうことで、わずかな力でも折れてしまうことがあります。その原因の一つが「腫瘍」です。今回は、動物における腫瘍による骨折の原因や治療法について詳しく解説します。


1. 腫瘍による骨折とは?

通常、骨は丈夫な組織ですが、腫瘍が骨に影響を与えると、その強度が低下し、骨折しやすくなります。こうした骨折は「病的骨折(病理学的骨折)」と呼ばれます。病的骨折は、外部からの強い衝撃がなくても起こるのが特徴です。

特に、腫瘍が骨そのものに発生する場合(原発性骨腫瘍)や、他の臓器から転移してくる場合(転移性骨腫瘍)では、骨の密度が低下し、通常の運動やちょっとした動作だけで骨折してしまうことがあります。


2. 骨にできる腫瘍の種類

骨に関わる腫瘍には、以下のようなものがあります。

① 原発性骨腫瘍

骨自体に発生する腫瘍です。代表的なものとして以下のものがあります。

  • 骨肉腫(こつにくしゅ):犬では特に発生率が高い悪性腫瘍で、骨を破壊する力が強く、転移しやすいのが特徴です。
  • 軟骨肉腫(なんこつにくしゅ):骨よりも軟骨に由来する腫瘍で、進行は比較的ゆっくりですが、骨に影響を及ぼします。

② 転移性骨腫瘍

他の臓器にできた悪性腫瘍が血流やリンパを通じて骨に転移したものです。

  • 乳腺腫瘍や前立腺腫瘍の転移:犬や猫では、乳腺腫瘍や前立腺腫瘍が骨に転移することがあります。
  • 血液系のがん(リンパ腫、骨髄腫など):骨の内部に存在する造血組織にも影響を与え、骨がもろくなる原因になります。

3. 腫瘍による骨折の症状

腫瘍による骨折は、通常の骨折とは異なる特徴があります。

  • 突然の足の痛みや跛行(はこう):何の前触れもなく、急に足を引きずるようになることがあります。
  • 腫れやしこりの発生:腫瘍が進行している部位にしこりや腫れが見られることがあります。
  • 触ると痛がる、動きたがらない:特に長骨(大腿骨、上腕骨など)に腫瘍がある場合、動物が強い痛みを感じることが多いです。
  • 体重減少や元気消失:がんが進行すると、全身の状態が悪化し、食欲不振や体重減少がみられることがあります。

4. 診断方法

腫瘍による骨折を診断するためには、以下のような検査を行います。

  • レントゲン検査:骨の異常な形状や破壊された部分を確認します。
  • CT検査やMRI検査:腫瘍の広がりや詳細な状態を把握するために使用されます。
  • 細胞診や生検:腫瘍の種類を特定するために、腫瘍部分の細胞や組織を採取して検査します。
  • 血液検査:転移の有無や全身の状態を確認するために行います。

5. 治療方法

腫瘍による骨折の治療は、腫瘍の種類や進行度によって異なります。

① 外科的治療(切断や整形手術)

  • 骨肉腫などの悪性腫瘍の場合、患部の切断が必要になることがあります。
  • 腫瘍の進行度によっては、骨折した部分をプレートやピンで固定することもあります。
  • ただし、転移が進んでいる場合は、手術を行わず緩和ケアを選択することもあります。

② 放射線治療

  • 痛みを軽減し、腫瘍の進行を遅らせるために使用されることがあります。
  • 骨肉腫などに対して放射線治療を行うことで、疼痛管理を行うことが可能です。

③ 抗がん剤治療

  • 転移性の腫瘍や血液のがん(リンパ腫など)の場合、抗がん剤が有効なことがあります。
  • 骨肉腫の場合、手術後の転移予防として抗がん剤を併用することがあります。

④ 緩和ケア

  • 痛みを和らげるために、鎮痛剤(NSAIDsやオピオイド)を使用することがあります。
  • 動物のQOL(生活の質)を重視しながら、できるだけ快適に過ごせるようサポートします。

6. 予防や早期発見のポイント

腫瘍による骨折を防ぐためには、早期発見が重要です。

  • 定期的な健康診断を受ける(特に高齢の犬や猫)
  • 歩き方や行動の変化に注意する
  • 体にしこりや腫れがないかチェックする
  • 食欲不振や体重減少が続く場合は、すぐに動物病院を受診する

7. まとめ

腫瘍による骨折は、通常の骨折とは異なり、骨がもろくなってしまうことで発生します。特に、悪性の骨肉腫や転移性腫瘍の場合、進行が早く、適切な診断と治療が求められます。

もし、愛犬や愛猫が突然足を痛がるようになったり、しこりができているのを見つけた場合は、早めに動物病院を受診しましょう。適切な治療を行うことで、痛みを和らげ、できる限り快適な生活を送ることができます。

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